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ご意見部屋 沙耶:ここはホーリーの物語に関するコメントを書き込み・閲覧出来るコーナーよ! メイリン:感想、意見等はここに書き込んでくださいにゃ。作者の返答もここで行なうニャ。ただし、作者の都合上、返答は不定期になるニャ。 沙耶:もちろん、あたしたちの事とかあいつのこととか、この作品の気になることとかもOKよ。気軽に書き込んでね。 メイリン:コメント欄はこの下にあるニャ。ただし、作者や投稿者を迷惑になる荒らしは遠慮してほしいニャ。 沙耶:コメント、待ってるわよ! テストです。 投稿するとこの上のコメントが載る…はずです。 -- muna (2009-09-26 22 50 16) 設置お疲れ様です。 地道に読んでいますよw -- 第七スレの6 (2009-09-27 11 32 48) こんばんは。夜虹です。第一部を一通り見させていただきました。 真冬の川に流される神姫を拾って共に成長する物語というのはなかなか正統派な始まり方で、話を分かりやすく進めてありますな。 設定に関しても神姫の名前を与えて、初めてオーナーとして認識されたり、神姫における精神ダメージによって病院送りになり、そうなったときの治療法があったりと参考になる事が多く、考えさせられる所がありました。 後はオリジナル武装が非常に多く、それを用いた独特の戦い方は面白いですね。自分はあまりオリジナル装備は用いないのでこうした戦い方は見ていて新鮮ですよ。 今後の新装備、ストーリー展開を楽しみにしています。 -- 夜虹 (2009-09-29 22 00 50) コメントありがとうございます。 第七スレの6さま ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 夜虹さま 最初のころはどうやって話を進めていけばいいのか悩んでました。 過去にもこれに似た小説を書いた経験があったのですが、今回は設定的に悩んだところが多々ありました。 オリジナル装備も組み換えで出来るものが多いのですが、スクラッチに近いものも多少あります(メイリンの武器とか)。 ほかの方は写真やイラストで装備の詳細を掲載してますが、私の場合、現在のところそれがないので、今後どのようにして装備等を見せるか考案中です。 話が長くなりましたが、これからもこの小説をよろしくお願いします。 -- muna (2009-10-03 16 31 48) 上記の返答に追加。 オリジナルの装備ですが、組み換えで出来るものが多いと書きましたが、実際には単に組み換えだけなのは1/3ほどです。 あとは一部改造かリペイントしたものが多いです。 私の場合、出来る限り組み換えやほかの商品の流用で再現できるように設定しています。(例を言えば、獣牙王や不動のバリエーションは主に神姫のパーツで構成されています) それでも、新造しないと再現できない武器もありますが。 あとは丸々ほかの玩具から流用したりすることもあります(百雷はプライズ騎馬武者のリペだったりします) -- muna (2009-10-03 21 04 41) こんばんは。武装についての説明、ありがとうございます。手軽に作れるように工夫してある様ですね。 自分は素体のリペイントや武装の小改造が関の山でして難しいのが多いかなんて思いましたよ 二章の最新話まで読ませていただきました。 今度はフェレットタイプのために頑張る翔君が第二の主人公となりましたか。 ホーリーベルはその時にはワールドロボットフェスティバルを駆け抜ける人気者とは二年の間になにがあったのか気になる所ですね。 オリハルコンシリーズを始め、確かに武装神姫だけが世界ではないですな。 とは言え、この様子だと武装神姫が市場の先を行っているなのはまだ変わっていないというのが実情という感じの様ですが。 そんな中で美由紀はいずるに実際に会った人ときましたか。ともなればこの勝負の後は都村いずるとはどんな人かという話になるかもしれませんね。 それが聞けるか否かでいろいろと話が変わってきそうな気がしますよ。 -- 夜虹 (2009-10-10 02 19 46) 夜虹さま 第2部は翔くんと美由紀さん、それぞれの視線で物語を進めていきます。 彼らがいずるとホーリーを目標にするためには、それなりのレベルを持たせたほうがいいと判断したからです。 そのためにWRFという大きな舞台を用意する必要があったわけです。 ほかの美少女タイプをだしたのは、ロボット業界の変化を知ってほしかったため。 あと、美由紀さんがいずるを目標にしているのは、同じ場所まで行き着くことのほかに、もうひとつ理由があるのですが・・・。 それはあとの展開にとっておきます。 書き込みが少ないのは、部屋の入り口が目立たない場所にあるからなのでしょうか・・・? ちょっと体調が悪いので、今日はここまでにしておきます。 -- muna (2009-10-12 21 48 58) ご意見部屋を少し目立つ(?)場所に移動しました。 これで少しは判る・・・かな? -- muna (2009-10-31 22 38 56) 場所としてはいいと思います。書き込みが少ないのは……感想を書くというのがちょっと勇気のいる事だからなのかもしれませんね。 ウサギのナミダは思わず書いてしまいたい小説故にそうしたいと思えるたくさんの感想が来ている事ですしね 謎の鉄騎兵は今の所は武器がわかってシルエットが多少わかった程度ですか……。 とはいえ、再現した神姫と闘えるとなれば何かしらの糸口がつかめそうではありますな。 まずはその神姫と戦って、それから進めるのかもしれませんね。 次を楽しみにしていますよ。 -- 夜虹 (2009-11-07 02 26 18) 名前 コメント
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「相手の武装が解らないからここはアンジェラスで」 「ありがとうございます!ご主人様!!」 手の平でおおいに喜ぶアンジェラス。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明るい表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! アンジェラスを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってアンジェラスの観戦をする。 「アンジェラス、頑張れよ!」 「はい!ご主人様!!」 「負けるんじゃないよ!一番最初の闘いなんだからな!!」 「お姉さま~頑張って~!」 「アンジェラスさんー!頑張ってください!!」 「うん!」 アンジェラスは元気な笑顔を俺に見せ、筐体の中へと入って行く。 そんな時だった。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていたのだ。 いつになく俺の心は興奮している。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとアンジェラスに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号の声が鳴り響き、一気に筐体内の中に緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、まずは二人とも距離を縮め接近する。 アンジェラスは清龍刀を出し右手に持ち、敵のストラーフに斬りかかった。 「せいっ!」 ガキン! 振り下ろされた清龍刀はDTリアユニットplusGA4アームの右のチーグルで受け止められてしまった。 敵のストラーフはニヤリと笑い、もう片方のチーグルでアンジェラスの右わき腹を攻撃しようとする。 「ハァー!」 「ッ!?」 とっさにアンジェラスは清龍刀を自分から見て右側面に向けた。 自分のわき腹が狙われた事を察知し、清龍刀を盾にする事によりチーグルの攻撃を防ごうとしたのだ…だが。 グワシャンー! 清龍刀とチーグルがぶつかった瞬間、衝撃でアンジェラスは地上に向けて吹っ飛ばされてしまったのだ。 そのまま吹っ飛ばされたアンジェラスは、なんとか体勢を整えようとしたいたが、敵のストラーフはその時間帯も許さない。 何故ならば、シュラム・RvGNDランチャーを構えアンジェラスに狙いを定めていたからだ。 「オチローーーー!!!!」 ストラーフがシュラム・RvGNDランチャーを撃ち、弾がアンジェラスに目掛けて飛んでくる。 俺はこのままヤバイと思い、大声で叫んだ。 「アンジェラス!ポラーシュテルン・FATEシールドを使えー!!」 「あ、はい!」 装備していたリアウイングAAU7の翼に装着させていたポラーシュテルン・FATEシールドを左手に持ち、スキルのステディプロテクションを発動させる。 ボカーン! ステディプロテクションの発動と同時に弾が当たり、アンジェラスの周りは煙だらけになる。 大丈夫なのだろうか? 煙で何も解らない。 もしかしてステディプロテクションが間に合わなかった!? いや、それはないはずだ。 あの瞬間、ステディプロテクションの壁に弾が当たる所をこの目でしっかり見たのだから。 「大丈夫かー!?」 ヒューンィーン 俺が叫ぶと、なにやら静かに動く機械音が耳に入った。 まさか、この音は!? 「イッケーーーー!!!!」 アンジェラスの姿は見なくとも声だけで認識できた。 紛れも無くアンジェラスの声だ。 バシューーーーン!!!! 煙の中から一直線の青い光線が飛び出し、ストラーフ目掛けて飛んでいく。 「えぇー、そんなのアリ~!?」 ズバーーーーン!!!! 「アグッ!?」 ストラーフは直撃を回避したものの、DTリアユニットplusGA4アームの左翼部分に命中し、殆どもってイカレタ状態。 これで左翼が無いと同じ、相当なバランス体勢が悪くなちまったに違いない。 それにしても、やっぱりあの攻撃はアンジェラスだったかぁ。 使った武器はGEモデルLC3レーザーライフル。 準備250硬直300、とても時間を掛けないと撃てない武器だ。 本来ならアンジェラスが撃つ暇が無かったと思うが、煙の中に居たために敵のストラーフが攻撃出来なかった。 それにシュラム・RvGNDランチャーを撃った反動で時間が空いてしまった。 その空いた時間を使ってアンジェラスがGEモデルLC3レーザーライフルを使用したのだろう。 「今だ、アンジェラス!」 俺は右手の拳を左手の手の平に打ちつけ、パンッ、と音を鳴らせる。 アンジェラスは煙の中から勢い良く飛び出し、M4ライトセイバーを取り出す。 ビシューン、という音とともに柄から発する棒状の光の刃が飛び出す。 「決めます!」 アンジェラスが叫び、敵のストラーフに斬りかかった。 ズバズバズバズバズバズバズバー! M4ライトセイバーのスキル、ジャスティスラッシュが発動し敵のストラーフを斬り刻む。 丁度、10HITした時に敵のストラーフのHPが無くなり力尽き地上に転落していき、ゲーム終了。 俺の方の筐体に付いてるスピーカーから『WIN』と女性の電気信号の声が鳴り響く。 多分、相手の方では『LOSE』と言われてるだろう。 そりゃそうだ。 勝ちがあれば負けもある。 二つに一つ。 「ご主人様!勝ちましたー!!」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶアンジェラス。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるクリナーレ達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、アンジェラスを筐体から出さないといけないなぁ。 俺は筐体の神姫の出入り口の中に手を突っ込みアンジェラスを待つ。 数秒後、アンジェラスは満面の笑みをこぼしながら俺の右手の手の平に乗った。 「ご主人様、初戦は勝利です!」 「そうだな。よくやった、アンジェラス。これはご褒美だ」 「…あっ」 俺の右手の手の平に乗ってるアンジェラスの頭を左手の人差し指の腹の部分で撫でる。 本来なら手の平全体で撫でてあげたい所だが、彼女達の身体は15cmの大きさだ。 頭の大きさも小さいため撫でるのは難しい。 だから人差し指の腹の部分で優しく撫でる。 「気持ち良いです。ご主人様…」 頬を桃色に染めながら照れるアンジェラス。 可愛い奴だ。 「あー!いいなぁ~アンジェラスの奴~。よし!!次の試合はボクが出る!!!」 「ダーリンのご褒美を貰うために頑張らないといけませんわね」 「あの…私のバトルは最後でもいいので…もし勝ったら、お兄ちゃんのご褒美くれますか?」 両肩で何やらアンジェラスに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるつもりだから一応全員バトルさせてやるか。 俺はアンジェラスの頭を撫でるの止めて離すと。 「…え?もう、お終いですか………」 とても名残惜しそうに切ない顔で俺の事を上目づかいで見てくる。 うっ!? 可愛い過ぎてもっと撫でてあげたくなるシチュエーションだ。 だがもし、ここでまた再びアンジェラスの頭を撫でると両肩に乗っている三人に何されるか解らないので撫で撫ではお預け。 アンジェラスを右手から右肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からアンジェラスの二つ名が出来た。 名は『全てを束ねる者』…。
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武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2 攻略wiki このwikiは「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」の攻略まとめwikiです。 Wikiの編集方法はこちらをご参照下さい。 当サイトは他サイトからのコピペ転載は禁止しております。 商品情報 タイトル 武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2 発売元 KONAMI 対応機種 プレイステーションポータブル ジャンル アクション 発売日 2011年夏 価格 未定 CERO 審査予定 リンク 公式サイト ニュース “きゅんキャラ”などが当たる,「一番くじ 武装神姫」が9月下旬より販売開始 (2013-09-18) 「武装神姫」グッズが,コミケ83に登場。神姫達がデザインされたTシャツなど (2012-12-27) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,竹達彩奈さんが演じる神姫を配信 (2012-03-16) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,DLCでマリーセレスシナリオなど登場 (2012-03-09) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」DLCで「オールベルン」が追加に (2012-03-01) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」プロキシマ専用シナリオなどが配信に (2012-02-23) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,ヴェルヴィエッタの姉妹機「リルビエート」がDLCで登場 (2012-02-16) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,DLC第11弾はアーティルのシナリオ (2012-02-09) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,DLC第10号はヴェルヴィエッタ (2012-02-02) 「武装神姫」対象商品の購入者にイラストブックマーカーを先着順でプレゼント (2012-01-26)
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別にどうという事も無い 70年前の国民的アニメで、永遠の小学生達が遊んでいた様な、時代に取り残された空き地が、丘の上にぽつんとあった だがそこは彼女達にとってだけ、聖地であった 「闘いに呪われ、闘いに祝福された存在」彼女の目指す/彼女の嫌う偉大な女王ならば、そう表現しただろう身長15センチの戦女神・・・武装神姫・・・彼女達こそ、2030年代に生まれた人類数千年の願望の結晶であった 「リライト」 本来の武装を一切装備せず、ヴァッフェバニーのブーツといくつかの銃器、短いが幅広の剣のみで武装した軽装のストラーフ・・・「ニビル」だった 砂埃を巻き上げる風に、マントがはためく 腰に差した拳銃はダブルアクションのリボルバー・・・いつでも抜き放ち、発砲する事は出来る 待ち人はなかなか来ない。元来気の長い「たち」では無い彼女にとって、この数分、否数十秒、否々数瞬はひたすら焦れる 紅い・・・ 甲冑姿の紅緒が太刀を履いて現れる 草もまばらなむき出しの地面に、その姿は異様に映えた 『・・・待たせたな・・・装備を探すのに手間取った』 ニビルは感情を顔に表さなかった 襟が口元を隠す・・・同じ風で、紅緒のポニーテールも流れた 『始めようか・・・私達の勝負を』 ただその一言、それを聞く為だけにこうして待っていた気さえした ゆっくり頷く これからようやく始まる、二人の闘いの為に・・・ 晴天の下に白刃が閃く 綺麗な弧状の残影を引き摺りながら舞ったそれはしかし、苦も無く、神姫の体にはやや幅広な片刃剣によってブロックされる ならば、と刀身同士が噛み合った場所を支点に跳躍(注1)。ニビルの背面を取る 「へぇ!」 感嘆の声をもらすニビル・・・くそっ余裕かまされてる 着地と同時に大地を蹴り疾駆。太刀は肩の高さで切先を背側に流し、地面に水平に構える 懐に飛び込んで絶句。マントを被ったままの癖に振り返りが速過ぎる 「はああああああっ!!」 勢いを殺さず(殺せず)突撃。ニビルの左手がヒップホルスターのコンバットナイフを抜き放つ 空気を薙ぎ斬る様な猛撃。だが交差法だ、私の太刀がナイフの刀身を断つ 飛び込めたと感じた瞬間、ニビルが恐ろしい速さで身を引く。背面には大口径ライフル・・・間合いを取られるととても困る 「かなり動けるようにはなったけど、まだまだ荒いわね華墨!喰らいなさいな!!」 強烈な爆音を無数に響かせながら、スケールメートル(注2)レベルで.30口径のバトルライフル(注3)を乱射するニビル、間合いを調整すべく走る私・・・が、装甲は無残に削り取られ、一発が太刀の刀身を掠め、中ほどからへし折る 「おぉっ!?」 呻きながら後方に跳躍・・・私の跳躍力は普通の武装神姫のそれを大きく上回る 着地点すれすれに3発着弾、被弾を免れたのは運以外の何者でもない 判ってはいたが・・・流石に手強い・・・!! 懐かしい軽口の聞こえない戦場で、私は貧弱なコバットプルーフから状況打開に努めた ばきんばきんばきんばきん!! 硬い音が連鎖、ハンドスプリングで二回後転しつつ、凶暴な神姫用マグナム弾のあぎとから逃れる (太刀なし・・・相手は防弾マント・・・きついな) 流石に何時迄も回避し続けられるものではない。華墨の軽業は動きこそ速いものの、何度も見せれば当然容易に軌道を読まれ、見切られ易い 腰に残った脇差は、決め手に使う事が多い武器ではあるが、主力にするには頼り無さ過ぎる (まして技量差を埋める程の装甲の優位も無い・・・) 華墨自身が、どちらかというと装甲など飛び道具相手に間合いを詰める数瞬もてば良いと割り切るタイプだったので、重装甲を纏っていたのは彼女の少ない戦闘経験の中ですらごく初期の間だけだった 彼女が今迄闘って来た環境では、サイフォスの重装甲形態もかくやという重装甲主義者がごろごろ居た事もあって、むしろ装甲には頼れないと言ってさえ良かった (いっそ無手で格闘戦にもちこむか?) あまり実戦で試した事は無いが、多分それなりに腕力もある方だと推察出来た為、脇差と短機関銃の二択よりは幾分「まし」に思えた (やって見るしかないな) 焦れたニビルが剣を構えて突っかけて来る。赤熱した刀身から充分推察出来る破壊力を、わざわざ体で浴びる程華墨はマゾヒズムに目覚めている訳でも無かった 『はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』 振り下ろされる熱化剣、それをホールドしたニビルの左拳に集中力を注ぎ、脇差を抜くそぶりを見せた左手はそのままに、右拳を突然繰り出す 『!?』 直前に察知して拳を引くニビルその右手の人差し指が短銃身のリボルバー(注4)の引き金を絞るより迅く、華墨の左手の白刃が閃く!! びきいいいいいぃぃぃん!!・・・と 異様に響く金属音を周囲に響かせながらニビルの剣がへし折れる 同時に発砲される銃弾、銃弾・・・! 「そうそう何度もお気に入りをぶっ壊されてたまるモンですか!!」 降り注ぐ痛みは、私の身体機能が壊れていく事の証左、この闘いがバーチャルで無い事の証 そして、飛び散る鮮血は私が「普通の武装神姫」で無い事の、この上なく雄弁な自己紹介であった 「ぐっ・・・ああぁっ!!!」 慣れる事は出来ない、鉄の味 慣れる事は出来ない、死の感覚 だが、私はこんな闘いを、既に九度、繰り返していた 即ち、既に数度、普通の神姫や、人間であれば「死んで」いる程の重症を経験していた 私の体に図らずも宿ってしまった「オーバーロード」「Gアーム」「呪われた蟲毒」であるところの異能力「ギガンティス」が、私の肉体(そう表現して良いなら)を文字通り「身長15cmの人間」にし、さらにそこに、無限ともいえる自己修復能力と不死性を付与したからだ 最早私は、厳密には「武装神姫」というカテゴリからは外れた存在になりつつあり、この体では公式戦に出る事は不可能だろう だが 否、むしろだからこそ 私は「槙縞ランキング」(注5)に情熱を注ごうと決めていた バーチャルバトルが主体の「槙縞ランキング」ならば、私の肉体的特長は問題にならない 何よりも、あそこには私が 私と『マスター』が求めた最強の女王 「クイントス」が居るからだ 「また私の勝ちね・・・これで10戦8勝2分けかしら?」 無様に地べたに這い蹲る私を覗き込む紅い双眸 「・・・そうだな・・・今回は・・・いけると思ったんだが・・・な」 「猫跳びの後着地が一瞬もたついたからだろうね」 急にマスターの声がかかって周りを見渡す 居なくなってしまった私の『マスター』佐鳴武士に代わって、半ば強引な手段で私を自身の神姫とした(してくれた)等身大ストラー(違)神浦 琥珀・・・ 「ただいま華墨・・・その分じゃ随分立ち直ったみたいだね」 「いつまでへばってんのよ!雑魚みたいに!!そんな傷さっさと治して、今日は琥珀に剣打ってもらうんでしょ?」 やかましくまくしたてるジルダリア「エルギール」に急き立てられて、私はしぶしぶ立ち上がる 言われる通り、既に傷は消えつつあった 「じゃあ今日はここまでね。今日の戦績はしっかり記録しとくからね」 言いつつ、ニビルはトレードマークの赤い靴に履き替えて、その場を後にしようとする 「あ・・・!待って」 口には出さず、なに?という視線だけ此方にめぐらす彼女の仕草に、思わず胸が高鳴る 「・・・ありがとう・・・付き合ってくれて。まだ本格的に復帰出来るかどうかは判らないけど・・・ニビルと闘った事は忘れないから・・・!!」 しどろもどろな私に、ニビルは高飛車な笑みで返し、最初に会った時と同じ様な台詞でこう返すのだった 「ヌルのマスターであると同時に槙縞ランキング2位(注5)のランカーとして貴女の帰還を祝わせて貰うわ」 「私はニビル。〈神の星〉暗黒星ニビルよ。槙縞ランキングへお帰りなさい、華墨!」 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ 注1.鳳凰杯編Ⅰ 「蒼い翼」参照。因みにクイントスはこの動きを「猫」或いは「猫跳び」と呼んでいる。 軽業以外の何者でもない動きだが、運動能力が体長に吊り合っていない神姫ならではのコンバットトリックとして有用であろう事は想像に難くない 注2.戦う神姫は好きですかより。今回は特に有効に機能してくれる 注3.アサルトライフルの中でも、米国がNATOライフル弾としてゴリ押しした結果、フルオート火器には不向きと判っているのに大口径で過剰威力の7.62mm×51弾を採用させられた不幸なものがいくつかある。そういったものの中には名銃と呼ぶに相応しいものも存在し、ファンは悔恨の念も込めてこう呼ぶ。今回ニビルが使用したのはFN社のFAL。装弾数20発、速射ピッチ秒間10.8発の代物で、フルオートで使うには余りにも不向き・・・の神姫スケール仕様(長い) 注4.ニビルは常時、メインハンドガンとは別に一挺の小型ハンドガン、一挺の超小型(デリンジャー等の様な)拳銃をバックアップとして装備している。今回のバックアップはM66の2.5inバレル仕様・・・の神姫スケール仕様 注5.この後、前回の上位戦で闘わなかった強豪ランカーと闘って、すぐにランクを8位迄落としている(笑)
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西暦2036年、第三次世界大戦も起きず、ノストラダムスの大予言も大ハズレしたため、 人類は平和を謳歌していた。 そんな中、携帯電話やパソコンに並ぶ「一人一つは必ず持っておきたいもの」と言うことで 大流行しているものがある。 「武装神姫」と呼ばれる身長150ミリの意志を持ったフィギュアである。 名前からしてお気付きだろうか、このフィギュアはいわゆる美少女モノである。 その容姿や性格は千差万別である。人々は彼女たちを戦い、競わせたり、話し相手にしたり・・・、 他にも色々あるが放送禁止用語も含まれるのでここでは省略させていただく。 前置きが無駄に長くなったが、この物語はどこにでも居そうだけど特殊なスキルを持った主人公とその神姫達が 織り成すコメディ(?)の序章である。 零之壱
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/950.html
神姫の構造材をプラスチックでないものにする そういう案は最初からあった 当然、現状の人工皮膚も純粋な意味でのプラスチックではないが 様々な試行錯誤の末現在の形に纏まったのだ 例えばそれはこんな試行錯誤である 「無題を冠した未完の彫刻」 「駄目です、制御失敗。自壊しました」 若い白衣の男が、淡々と告げた 報告を受け取る男は、若くも見えるし老けても見えた 渋い表情で画面を見る 無残な姿になった神姫が映っていた 構造材に自己修復能力と自己増殖能力を付与し、人体と同じように振舞わせる そういうプランだった だが、そのシステムの制御は困難を極めた それでも何とか作り出したそのシステム、『G』は バトルに臨み得る神姫にとって、非常に有用だった 当時、既に神姫に武装を施してバトルに従事させるということは行なわれていた だが、その度に破損箇所を買い換えるのは面倒だったし、素材で解決出来るのならしてみようとしたのが彼らのグループだった 折りしも『武装神姫』のプランが本格的に始動していた バトル向きに調整された武装神姫に、メンテナンスフリーの自己修復ボディ まさにうってつけと言えた 副作用として、有機物的な特徴を持つ『システムG』は、神姫により人間に近い皮膚を与える事を可能たらしめた だが、傷ついた体を修復しようとした時、どうしても必要以上に増殖し、宿主である神姫を破壊してしまう 既に十数体の神姫が犠牲になっていた 大手のスポンサーであった鶴畑コンツェルンも、そろそろ資金援助をやめようと動いていた 「短絡的に過ぎる・・・このシステムが完成すれば、神姫ばかりではない、人間にも大きな利益があるというのに」 実の所、男の真の狙いはそこにあった 「神姫と人間の境界は脳だけ」にしてしまう事 それ自体は、神姫の開発当初から目指されていた一種の目標地点ではあった 神姫は身長15センチの人間であるべく 遥か古代からの人類の夢、人造人間の完成を目指して 様々な倫理的、技術的問題から身長15センチに決定されたが、男はどちらかというとそれには反対だった 完成した人造人間に人間の脳を移植する それによってより良い肉体を手に入れ、人類それ自体がより進化する 少なくとも男はそう信じていたし、『システムG』を装備した神姫はその試金石になる筈だった 男は自分自身が人間を越えたかったのかもしれない いずれにしても、現状の『システムG』のままでは、少なくとも人間に使用する事などとても出来なかった 開発チームも解体される時が近付き、資金援助の減少、チームの縮小等から、徐々にスタッフの士気も無くなり、気も緩みつつあった そんな時期だった 暴走し、異常増殖した『G』の組織に、生物が触れると融合する性質が明らかになった 否、厳密に言えば、過失から、人間と『G』の強制接触が行なわれたのだ 結果は、恐るべきものだった 『G』と融合した人間は、禍々しい「なにか」に変貌し、暴れ狂ったのだ しかも、そのスタッフは自らの意識を保ったまま、超細胞に取り込まれたのだ 結果そのスタッフは恐慌から暴挙に出たのだ その事実を示すデータは残っていない その日スタッフの一人の始末し損ねたぼやで、研究所は火に包まれたからだ 誰一人、生きている者の居る筈が無い程徹底的に、一切合財が炎の中に消えた スタッフの遺体は、殆どが原形も留めず、パーツも足りなかった為、正確な人数を確認する事も適わなかった 研究所で使われていた、旧式の動力炉が、危険な可燃物質を含んでいたか何かだったのだろう 調査は深く為される事は無かった だが、僅かに残ったものがある 部署が縮小されるに際して、他部署へ異動になった者の発言だ 曰く、「原型となる細胞質からクローン培養して、それを宿主神姫のAIの不随意領域で制御させていたんです・・・原型細胞がどこから入手されたのか、少なくとも私は知らないですね」 いずれにせよ、神姫に人間を越える肉の器を与えようとしたこの研究は頓挫し、神への道は遠ざかった TOPへ 「剣は紅い花の誇り 第貳部」へ?
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前編:彷徨姫 それは今から二週間ぐらい前だった。オレはいつもの様に『ポーラスター』で子供から大人までいろいろな人が神姫バトルをしている所をぼうっと眺めていたんだ。 『ポーラスター』は秋葉原を中心とする激戦区の中でも大きいゲームセンターの一つで神姫オーナーも多い大人気のバトルロンドの場だった。そのオーナー達の性格や印象も良く、神姫を持たない私でもあまり気にされることもなく、観戦する事ができる。たまに神姫を持っていない事で声もかけられるが、その事を言うと見やすい場所を案内してくれることもある。 優しい人達で周りのゲームセンターよりも居心地がよかった。 「ビィィィ!キュウゥブッ!! フルヴァーストォ!!」 「サー、コマンダー」 やたら暑苦しい人が叫ぶとB3(ビー・キューブ)と呼ばれた重装備のヴァッフェバニーがバズーカ砲、ロケットポッド、さらに二基のガトリングガンを構え、それを上空にいるアーンヴァルMk.2装備にFATEシールドとコールブランダーを付け加えた武装のアーンヴァルに向かって一斉掃射する 「アンジェラス! ステディプロティション!!」 「はい! ご主人様!!」 アンジェラスと呼ばれたアーンヴァルはB3の放つ大量の弾幕をFATEシールドのスキル ステディプロテクションで防御をし、B3のフルバーストを防ぐとリアユニットにマウントしてあるコールブランダーを抜きはなって、二つのビット リリアーヌを伴って、前進を始めた。 「牽制からライトニングソードだ!!」 「ええ!」 マスターの指示でアンジェラスはあらかじめ、時間を稼ぐためにリリアーヌをB3に飛ばし、コールブランダーを掲げてチャージを始めた。 飛んでいく二つのビットはB3めがけて左右から突撃を仕掛ける。狙われたB3はその攻撃をガトリングガンの段幕で迎撃するが、一つは破壊したものの、もう一つは片方のガトリングガンにつっこみ、自らもろとも爆発した。 さらに巨大なエネルギーブレードを形成し、チャージが完了したライトニングソードをアンジェラスが勢いよく振り下ろしてくる。 「ンンンンGoGoGoGoオォゥ!!! ビィィキュゥゥウブ!! カウンタァー! ショットォ!」 「サー、コマンダー」 振り下ろす直前、B3は残ったガトリングガンを両手で持った上で回避体勢に入り、ライトニングソードが目の前の地面に突き刺さって安全になった瞬間、反撃のガトリングガンを放つ。 が、かろうじて反応したアンジェラスはそれを避けて、反撃の被害を最小限にしようと動いた。 その瞬間、あらかじめルートを予測したかのようにバズーカがアンジェラスに着弾し、墜落した。 「きゃぁ!?」 「アンジェラス!?」 「ンフフハハアアアァッ! これが俺たちのトゥオルィック!! ビイィキュウゥブ! 追撃ぃ!!」 「サー、コマンダー」 それは確かにトリックだった。ガトリングガンで弾幕を張って、相手の避けるルートを限定し、威力の高い本命のバズーカを確実に当てる。すごく合理的な戦術だ。 このまま、アンジェラスを仕留めきれるのだろうか。 B3はガトリングガンの弾が切れたのか、二丁両方を捨てた。代わりに大型のナイフを二本取り出してそれぞれの手で持ち、ロケットポッドの連射で牽制しつつ、接近を始めた。 墜落したアンジェラスはディコ・シールドで素体に当たる弾を防ぎつつ、立ち上がってB3を迎え撃つ。 「勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「アンジェラス!MOA!」 そして近距離、B3がマスターの叫びとともにナイフで攻撃を仕掛けたその刹那、アンジェラスは鋭い指示に反応して彼女の攻撃を回り込むようにかわした。次にすれ違い様にコールブランダー銃形態でB3を撃ち、リアユニットとマシンガンを分離変形させる。 BM『モードオブエンゼル』だ。 変形した白い戦闘機は背面を無防備にさらしているB3に大量の弾丸を殺到させた。 「Noオオオオォォッ!!?」 背面からの集中砲火にたまらずB3が倒れ、勝敗が決するとマスターの方がとてつもない悲鳴を上げた。 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 センター中に響きそうな叫び声が聞こえる中、オレは腕時計を見る。そろそろ夕方にさしかかるいい時間になっていた。戦いの後が気になる所だが、面倒くさいテストが明日あるため、それの勉強のために帰ることにし、『ポーラスター』を抜け出した。 「アンジェラスはかっこいいなぁ。B3もあんな攻撃をするなんて武装神姫ってすげぇ……」 外に出た時、オレは憧れを口にする。オレは武装神姫を持っていなかった。兄貴は初代チャンピオンでバリバリの神姫マスターをやっているが、交通事故に遭って目が見えなくなって以来、オレに武装神姫を話さなくなった。 だからこうしてポーラスターで武装神姫を見ているんだけど、やはりダメだった。 その場にいるのに自分はその場とは違う。そんな気分だ。そんなモヤモヤした気持ちを抱えこみながら歩いているその時だった。トライクで走る小さな赤い影を見つけた。すごく速いそれはすぐに追わないと見失いそうだ。 (何なんだ?) 気になり、それを追い始める。走り出すとさすがに人と神姫の体の大きさの差は大きく、だんだんと追いついていく。 少し走って裏通りに行くと赤い神姫がトライクを止めた。オレがそれに合わせて足を止めると、彼女はそこから降りてオレを見ていた。 「さっきから追いかけてくるのが、君? 何か用?」 鋭い目でオレに質問をしてくる。見た所、アークのりペイント版か何かのような神姫だった。装備で違うのは額から角が生えているぐらいだ。 「何でマスターがいないのか気になったからさ」 「私にマスターはいないよ。ただの野良神姫だ。真の力とは何かを探してる。君は知ってるの?」 「オレに難しいことはわかんないけど、そもそも真の力って何だよ?」 「私は単純な力だけでは勝てないマスターをもったライバルがいる。彼女はその力は自分一人だけのものじゃないと言っていた。奴に勝つためにはそれが必要なんだ」 詰まる所、マスターのいるライバルに負けて、その力が何であるのかを探しているらしい。 事情はよくわからないが、オレにとっては笑ってしまえるほど単純なことだった。 「簡単じゃん! その神姫ってマスターと仲良しなんだなっ!」 「え?」 「マスターの期待に応えたいから頑張ったんじゃないかな。当たり前のような神姫とオーナーの関係さ」 アークに対して自信を持って答える。マスターと神姫の関係は当たり前の事過ぎて普段は考えもしないけど、その当たり前がないとすればどれだけの差があるか。それは多くのオーナーが知っていた。野良神姫やイリーガルが出てきても、絆を持ったマスターと神姫がそれを打ち負かしているのは兄貴がよく言っていた。 「当たり前の……か」 その言葉に何かを感じたのか、アークはフッと笑った。鋭い目も緩んで、何かをつかんだ様な柔らかい表情を見せる。自分にもこんな神姫がいればなんて思ってしまうほどその顔はとてもきれいに見えた。 「なぁ……君……!」 アークがオレに何か聞こうとしたその時、裏通りの奥から、エネルギー弾が彼女めがけて飛来してきた。 アークはそれに反応して避けて、臨戦態勢に入って、アサルトライフルを弾が飛んできた方向に構える。 「この不意打ちを避けるとは大したもんだ」 奥から上から目線の態度をした痩せ型の男がエネルギー弾を飛ばしてきたと思われる、最新型の神姫 蓮華と一緒に出てきた。 「ここはガキが来るような場所じゃぬわぃ。とっとと有り金と神姫をおいて消えぬぅわ」 妙な口癖の蓮華がオレにアークと金を渡せと要求する。どうやら、アークはオレの神姫だと思っているらしい。 「ん? どうしたんだ? その神姫はお前のじゃないのか?」 痩せ型の男が現れて、オレに問う。オレは彼女のマスターじゃない。それどころか、神姫すら持っていない。どう答えればいいんだろう……。 そんな風に戸惑っている時だった。アークがシルバーストーンを構えて蓮華にそれを容赦なく撃ち、堂々と答える。 「そうだ! 彼は私のマスターだ!」 驚いたことにどういう訳か、会ったばかりのオレをマスターだと言い張ったのだ。神姫を持っていないのにこんなことで大丈夫なんだろうか。 「君、私に名前をくれ!」 オレは突然のことに驚いたが、彼女に言われるがままに名前を考える。一瞬の中で思ったことは、彼女と遠く遠くを走り続けたいという思いだった。だから……! 「ああ! 俺は響! お前は百日! 俺の神姫だっ!!」 「OK! 行こう! 響!!」 与えられた名前に応じ、アーク――百日はもう一度シルバーストーンを放つ。 「ははは!! 何だそりゃ!? 即席チームでんなことのほざくんじゃねぇ!!」 「ほほほ。これは獲物じゃぬわ! 死ぬぇい!!」 蓮華と痩せ型の男は即席の俺達の事を笑い、ただのカモだと思って笑うと蓮華がレーザーを回避してそのまま二黒土星爪で百日に襲い掛かる。 それを見た彼女はアサルトライフルを連射して、蓮華の勢いを削ぐ。さらにそれで生じた隙で二黒土星爪を回避しつつ、フォールディングナイフを展開して逆に反撃の斬撃と蹴りを決める。 最後の蹴りの力は強く、蓮華を近くにあったゴミ箱まで吹き飛ばし、叩きつけた。 「ぐぇっ!? な、何だあの出力は!?」 「あの角を見た時からまさかとは思ったが、そのアーク、イリーガルか!?」 百日の蹴りの強さを見て、痩せ型の男が動揺する。どうにも百日はイリーガルというタイプで、とんでもない出力であるらしい。 何なのかはわからないが、こちらに勝ち目はあるという事か。 百日は相手の動揺を気にする事もなく、シルバーストーンで蓮華を狙い撃ちにする。彼女はイリーガルだという事を認識したその攻撃を恐れているらしく、大げさに避け始めた。さらにその中で威力のある二黒土星爪から命中を重きにおいた一白水星剣に持ち替え、ヒットアンドアウェイ戦法へと切り替える。 「くっ……!」 身軽な装備でちょこまかと動き回って、百日を攪乱していく。百日もアサルトライフルとナイフで応戦するものの、その動きは早く、なかなか捉えることができない。 イリーガルと動揺はしているものの、蓮華にも素体の改造が加わっており、百日並の強さがあるのかもしれない。 強さがどうとかは置いておいて、このままでは小回りの利かない百日が押される。アサルトライフルとナイフでは仮に当たっても決定打にはならない。何とかしてレーザーを一発放り込み、追い込めれば……。 「……そうだ! 百日!! アサルトからレーザーにつなぐんだ!」 「なるほどね……。わかった! やってみる!」 何とか読まれない程度に百日に命令を下し、彼女はそれを実行するために距離をとりながらアサルトライフルを準備する。 「何かは知らねぇが、素人の作戦なんてうまく行きっこない! そのまま潰せぇ!」 痩せ型の男は何の作戦なのかわかっていないのか、依然として剣による攪乱攻撃を蓮華に続けさせている。 これならやりようはありそうだ。 百日は回避し、蓮華の隙を伺っている。オレもそれを見ていた。相手は直線的に動いているに過ぎない。 次の隙が生じるまでの時間はそう長くはないはずだ。 「……今だ! 百日!!」 「行けっ!!」 隙を捉えたオレが百日に合図を知らせると彼女はそれにならってアサルトライフルをばらまく。 「当たらぬわ!!」 そうすると蓮華は反射的に回避行動に移る。その時だった。その回避した先からレーザーが飛来し、蓮華の腹を貫いた。 「ぬわにぃ!!?」 「蓮華!? くそっ!!? どうなっているんだ!!」 まさか、避けた先にレーザーがやってくるとは夢にも思わなかったのか、痩せ型の男と蓮華は激しく動揺する。 オレも内心、成功するかどうかヒヤヒヤしていた。これはB3のやっていたトリックを真似たものだ。 覚えていたので再現した即席だったため、上手く行くか心配したが、これで決定打は与えられた。 「当たった……これが……」 「百日! そのまま、追撃!!」 「あ、ああ!」 まさか、当たるとは百日も思っていなかったようで驚いていたが、オレの命令にマガジンを二つ装填する。 「インファニット∞アサルトだ!!」 「終わりだぁぁっ!!」 スキルを放つとレーザーでダメージを負って動けなくなっている蓮華に当たり、弾丸が装備を破壊し、彼女を戦闘不能に追い込んだ。 「ぬおぉぉっ……!?」 「蓮華!? くそっ!! 覚えてろ!!」 蓮華が倒れる状況に驚きながらもこのままではやられると思った痩せ型の男は彼女を持ち出し、逃げ出した。 それを見て、戦闘が終わったと判断した百日は武装を解除し、トライクモードに戻した。 「響。ありがとう。この勝ちは君のおかげだ」 「百日だって頑張ったじゃないか! これは二人の勝利さ!」 戦いが終わると礼を言ってきて、オレは思ったことを返す。そうすると百日はニッと笑って見せ、手を出した。 「そっか。頑張るって言葉、教えてくれ」 「ああ! 頑張るぜ!!」 「じゃあ、それをみせてくれ」 オレはそれに応じて百日の小さな手に握手した。こうしてオレと百日は無い者同士がパートナーとなった。 イリーガルがどうとか痩せ型の男が言ってたけど、百日が悪い奴の手先なんかじゃないのはわかってる。 誰かがもう一回、そんな事を言ってきたら胸を張って「百日が悪い奴なんかじゃない」と言ってやろうと思う。 テストが終わったら、兄貴は一人暮らしだから、悠にイリーガルについて聞いてみよう。あいつなら神姫をよく知っているし、百日のイリーガルについて何か知っているかもしれない。 「百日。よろしくな」 「ああ」 明日のことを考え、決めるとオレは百日と共に自分の家に帰る事にした。 ひとまず、帰ったらテストの予習を済ませないとならなかった事をすっかり忘れていた。 これで成績が良くなかったら母さんにこってり絞られてしまう。それだけは避けないとならない。 ……テスト、どうにかしないとなぁ。 戻る 進む
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-1 スポットライトに照らされた眩い舞台。 その縦横に光のラインが走る電脳空間を模したバトルフィールドに、エントリースポットから彼女が舞い降りたとたん、周囲から歓声が上がった。 「見てください。皆さん私の華麗なる姿を待ち望んでいたようですね」 「あのな、お前もう少しは緊張感持てよ」 沸き起こる歓声とは対照的なその少年の声に、彼女は蒼いポニーテールを振りながら答える。 「問題ありません、緊張する必要など皆無です。安心して私の戦いを見ているだけで結構、いわゆる〝大船に乗った気分〟ってヤツですね」 そう言って彼女は得意げに胸を張る。 その拍子に、身に着けている天使型武装のヘッドギアがずり落ちた。 「ドロ船の間違いじゃないだろうな……」 彼は軽く目頭を押さえると、成り行きとはいえこんな形で神姫バトルを行うハメになったことを、ひそかに後悔した。 * 先週まで咲き誇っていた桜も散り、街角ではそこかしこで新緑が芽生え始めている。 そんな暖かな陽気、まさに快楽日和……にもかかわらず駅前の広場に人がまばらなのは今日が平日ということからすれば仕方がない。 広場の時計台が刻む時間も当に十時を回っている。駅をゆく学生服や背広姿の群れも一段落し、桂樹駅は静かだった。 その駅のロータリーにある騎馬像(どこぞの芸術家が寄贈したとかいう話だ)の前に、ひとりの少年があくびを堪えながら突っ立っていた。 「全く、自分から呼んどいて遅刻かよ……伊吹のヤツめ」 独りでブツブツ言いながら、少年は所在無げにつま先で地面を蹴る。 そんな彼の仕草にベンチから声が掛けられる。 「しかしこの誘いを承諾したのはシュン自身です。ここで帰宅を選ぶということは、その約束を一方的に反故するも同然です」 その自身の内心を見透かした声に、シュンと呼ばれた少年は面倒そうに答える。 「こっちはもう三十分も待ってんだよ。……ったく、せっかくの休みなのに」 「待ち合わせの十時からは、まだ五分も経過していません。三十分近くも待つことになっているのは、わくわくして約束より大幅に早く到着したシュンの責任でしょう」 「誰がわくわくしてたよ? こんなに早く着いちゃったのは、お前が朝早くから急かすからだろうが」 苦い表情を浮かべながらシュンは傍らのベンチを見下ろす。そこでは先ほどからシュンに辛らつな意見を述べる声の主がチョコンと腰掛けている。 その〝彼女〟はジッと睨むシュンの視線に、抱えていたものを脇に置いて振り向いた。 「失敬な。それではまるで私が『遠足が楽しみでたまらないお子様』のようではないですか。言い掛かりです、激しく名誉毀損です。弁護士を呼んでください」 「あのなぁ、ゼリス。どこの世界に神姫専門の弁護士がいるんだよ」 キッと意味もなく凛々しい顔で彼のことを睨みつける少女――の姿をした彼のオートマトン(自動人形)――の姿に、シュンはいろいろな意味で間違っていると思った。 何がどう間違っているのかは、それはもう世界に聞いてくれ。 そんなくだらない訴えを脳の片隅に転がしつつ、シュンは隣に座る彼女を見やる。 蒼い豊かな髪をリボンで結ったポニーテール。 褐色の肌、理知的な翡翠の瞳。 神姫の中でも一際小柄で華奢そうだが、それを補ってあまりある存在感をまとった小さなフロイライン(お嬢さん)。 ――ゼリス。 彼女は彼、有馬駿(アリマ シュン)の武装神姫だ。 なぜ平凡な中学生だったシュンがこのいろいろな意味で普通じゃない神姫であるゼリスのオーナーになったのか? ふたりに尋ねればきっとこんな返事が戻ってくることだろう 「いろいろあって……(byシュン)」 「いろいろな事がありました……(byゼリス)」 どうやら彼らの関係には一般的な神姫とそのオーナーとは違った複雑な経緯があるらしい。 が、一週間も立てばそうした状況にも次第に慣れてくるもの。初めはゼリスに戸惑ってばかりだったシュンも、ようやく今後のことを考えるゆとりも出来てきた。 そんな訳でまずは神姫関連の様々なパーツを揃えようと、ふたりは最寄の神姫センターを案内してもらうため友人と待ち合わせの最中だった。 そもそも今日シュンたちを誘ったのはその友人、彼の幼馴染でもある伊吹からだった。 生粋の武装神姫バトルマニアである伊吹の誘いを、シュンは今日が創立記念日で中学校が休みであることと、先週の事件の反省から快く受けることにした。 しかし、ゼリスに尻を蹴られつつ(こんな言い方をしたらまた怒られるからシュンは口にしないが)待ち合わせに来てみれば、当の伊吹本人がまだ来ない。 シュンとしても今日の神姫センター行きはそれなりに乗り気だった分、何だか肩透かしを受けた気分だった。 「ところで……お前はさっきから何してるんだよ」 「シュン、見て分かりませんか? しばしの小閑に読書です」 そう答えゼリスは再び本を両手に持ち直し、ひとり読書のポーズ。電子書籍が一般化している中、彼女は昔ながらの紙の本を好んでいる。自分が電子化社会の代表選手のクセに。 身長14センチくらいの神姫が身の丈ほどもある文庫本を読んでいる光景は、見ようによってはなかなかシュールだった。 「それは見りゃ分かる。そうじゃなくて、お前はマスターである僕が待ちぼうけてるのに、それを無視してひとりで本読んでるんですか?」 「別に私が余暇を利用して何をしようと、シュンには関係ないでしょう? 過度のプライベートへの干渉は好ましく思えませんね」 「お前なぁ……。少しは自分のマスターの相手をしようとかは思わないわけ?」 シュンの言葉にゼリスは「ふむ」とその細い顎に手を当てながら逆に聞き返す。 「シュンは、私に相手をして欲しいのですか?」 不思議そうな様子で彼を上目使いに覗き込む、そのエメラルドの瞳に一瞬吸い込まれそうになり……はしたものの、すぐにシュンはシラケたようにかぶりを返した。 「いんや、そんなことはねーっすよ」 「ならば何の問題もありませんね。私は読書に没頭しますので、シュンも待ち人が来るまで現状維持に努めてください」 彼の投げ遣りな返事も意に関さず、ゼリスはそう述べると現状確認を済ませことに満足したのか、また読書の体勢に戻った。 そんな黙々と本読みにふけるゼリスを横目で見ながら、シュンは人知れず小さなため息をつくのだった。 神姫。それは自らの心を持ち、自らの意思で行動する全高15センチ程度のフィギュアロボの総称である。 様々な分野で活躍するロボットが存在する西暦2036年において、多様な機能、機構、機器を持ちオーナーである人間をサポートする、最も我々に身近な存在。 神姫とはオーナーとなる人間にとって、親友であり、家族であり、また愛しき娘でも恋人でもあった。いつしか人々はそんな彼女たち神姫の中で誰が最も美しく、優れ、そして強いかを競い合うようになった。 武装神姫。 様々な武器を駆り、装甲に身を包み戦う彼女らを人々はそう呼んだ。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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キズナのキセキ ACT0-2 ひどい顔 ◆ 「神姫センターに行きましょう!」 「前から訊いてるけど、何しに行くのよ」 「前から言ってますが、もちろん、バトルをしに、です!」 「前から言ってるけど、イヤ」 「これも前から言ってますが、なぜマスターは神姫センターに行くのを嫌がるんですかっ」 ミスティは菜々子に、まなじりをつり上げて見せた。 菜々子はため息をつく。 ここのところ、同じ会話ばかりだった。 ミスティはどうしても神姫センターに行って、バトルロンドで対戦がしたいようだ。 それは武装神姫のAIにプログラムされた、闘争本能みたいなもの、なのだろうか。 一方、菜々子はバトルに興味がなかった。 頼子さんは対戦仲間に引きずり込みたいと思っているのだろうが、あいにく菜々子にその気はない。 菜々子はミスティが気に入り始めていた。小さな姿は可愛らしいし、性格も素直でいい子だ。 でも、だからこそ、なぜそんなに相手と戦ったり傷つけあったりする野蛮なことをしたがるのか、分からない。 「この間調べたら、最寄りの神姫センターでも結構遠いじゃない」 県下の神姫センターまでは、最寄り駅から電車で二〇分ほど。 中学生の菜々子にしてみれば、少ないお小遣いを電車賃に変えてまで行くのはきつい。 これがいつもの断り文句、だったのだが。 「じゃあ、近所のゲームセンターに行きましょう」 「……ゲームセンター?」 神姫のバトルは神姫センターだけではなく、ゲームセンターやホビーショップでもできるらしい。 そう言えば、最寄りのF駅前のゲームセンターで、武装神姫のポスターを見た気がする。 もっとも、菜々子がゲームセンターに入るのは、友人とプリクラを撮る時くらいだろうか。 ゲームセンターに一人で行くのは、かなり気が引ける。 しかし結局、ミスティの熱意に押され、渋々ゲームセンターに足を運ぶことになった。 ◆ F駅前のゲームセンター『ポーラスター』の二階に、武装神姫コーナーはあった。 フロアの半分以上をバトルロンドの筐体が占拠している。プレイヤーたちは大きな筐体を挟んで、バトルに熱中している。 天井から吊された大型ディスプレイには、現在進行中の激しいバトルが映し出されていた。 他の客たちは、筐体を取り巻き、あるいはディスプレイを見上げて、熱心に観戦している。しのぎを削る好勝負に、歓声が上がった。 「わあ! 対戦、すっごく盛り上がってますよ、マスター!」 はしゃぐミスティとは逆に、菜々子は気後れしてしまっていた。 なんだか場違いな場所に来たような気がする。 武装神姫の対戦ゲームがこんなに盛り上がっているものとは知らなかった。 しかも、この場にいる人は皆、神姫のオーナーなのだ。こんなにたくさんのオーナーと神姫が集まっているのも驚きだった。 こんな場所で、まったく初心者の菜々子とミスティが、見ず知らずの相手とバトルする。 まず間違いなく、無様に負ける。 そんな恥ずかしいことできるわけないじゃない。 菜々子は早くも回れ右して帰りたくなっていた。 知り合いの神姫マスターでもいれば、練習と言って対戦することも出来ただろう。 あるいは、神姫センターならば、対戦者のレベルに合わせた対戦相手のマッチングなども行ってくれるサービスもあるのだろう。 しかし、ここはゲームセンターで、菜々子に知り合いのマスターもいなければ、マッチングサービスもしてくれない。 レベルや相性も自分で判断して、対戦を申し込まなくてはならない。 初心者の菜々子に、そこまでの度胸があるはずもなかった。 菜々子は大型ディスプレイを見上げる。 今行われているバトルの一つが、演出重視のカメラアングルで、実況されている。 高速で飛び交う銃弾に、一瞬の隙を突いたクロスレンジでの攻防。 今繰り広げられている激しいバトルが、自分とミスティにできるなどとは、どうしても思えなかった。 菜々子はため息をつく。 少しは気が晴れるかと思ってきてみたけれど、憂鬱になるばかりではないか。 胸ポケットにいるミスティを見ると、大型ディスプレイの対戦に目を輝かせていた。 めちゃくちゃ嬉しそう。 そんな顔をされてしまっては、帰るとも言い出せないではないか。 菜々子は壁の花になり、所在なげに対戦の光景を見つめていた。 ディスプレイの中で戦っているのは、白い天使型と、花をモチーフにしたという神姫だった。 二人とも空中を舞うように飛び、華麗な空中戦を繰り広げている。 蒼い空を背景に、二機の機動によって引かれる飛行機雲をきらめくレーザーや爆炎が彩り、まるで万華鏡を見ているようだ。 やがて、その一戦も終わりを告げる。 天使型の大型ビームキヤノンが必殺の一撃を放ったのだ。 絶妙のタイミングで放たれたビームは、見事花を散らした。 バトルが終わり、マスターが筐体の前から立ち上がった。 先ほど勝利した、天使型のマスターの姿に、菜々子は目を見張る。 高校生だろうか。 ブレザーを着た、肩までかかるウェーブ髪が印象的な、女性だった。 「あんな人が、武装神姫なんてやるんだ……」 菜々子には意外だった。 バトルなんて、男の人が好んでやるものだと思っていたからだ。 しかも、天使型のマスターは、思わず見とれてしまいそうなほどの美少女だった。 常連のプレイヤーや、彼女のファンらしい人たちに取り囲まれている。 彼ら一人一人に微笑みかける彼女を、菜々子は見るともなしに見ていた。 すると不意に。 その視線に気が付いたかのように、彼女がこちらを向いた。 視線が合う。 菜々子はあわてて顔を伏せた。 自分の視線は不躾すぎただろうか。 下を向く菜々子に、人の気配が近づいてくるのが感じられた。 目の前で、誰かが立ち止まった。 菜々子の視界に、その人物が履いているローファーが映る。 声がした。 「ひどい顔ね」 さすがにカチンと来て、顔を跳ね上げる。 初対面の相手に対する、第一声がそれか。 目の前に、思わず見とれてしまいそうな美貌がある。先ほど勝利した神姫のマスターだった。 思わずにらみつけてしまったその女性は、しかし、言葉とは裏腹に邪気のない顔で、 「そんな表情じゃ、かわいい顔が台無し。ほら、笑って」 そう言って、にっこりと笑った。 女の菜々子でさえ、ドキリとするほど素敵な笑顔。 怒りが霧散するのも一瞬。菜々子は呆けた顔をするのが精一杯という有様だ。 その女性は、軽く一つ吐息をつくと、顔に微笑みを絶やさずに言った。 「あなた、見かけない顔だけど、ここは初めて?」 「え……はい」 「気をつけなさい。あっちの男ども、あなたに声をかけようと、さっきから狙ってるんだから」 視線を男性たちのグループに投げた後、彼女はいたずらっぽくウィンクした。 その表情がまた、やたらと様になる。 菜々子は内心、びっくりしたり、どきどきしたりしながら、彼女を見つめるほかない。 「見たところ、初心者みたいね。バトルしたことはある?」 「……ありません」 「バトルしに来たの?」 「あ、ええと……」 一瞬口ごもった菜々子の隙をついて、 「はい、そうです!」 ミスティが元気よく返事をしてしまっていた。 「ちょ、ミスティ!」 「なんだ、神姫を連れてるんじゃない」 「その、これはちが……」 違っていない。 イヤイヤではあったが、ミスティのためにバトルしに来たはずだ。 言うべき言葉が見つからない菜々子の手が取られた。 目の前の彼女だった。 「じゃあ、わたしが教えてあげる」 「ええと……わあ!」 菜々子は強引に引っ張られた なんという女性だろう。 菜々子の頑なな心に、無理矢理割り込んでくる。でもそれが全然嫌じゃない。ただ、展開の早さに戸惑っているだけ。 「わたし、桐島あおい。あなたは?」 「……久住菜々子、です」 「いい名前ね」 彼女が笑うたび、彼女のペースにどんどん引き込まれていってしまう。 戸惑いながらも、つながれた手を菜々子は握り返していた。 ◆ バトルロンドの筐体のまわりは、喧噪に包まれている。 そんな中、先ほどあおいと対戦していた花モチーフのジルダリア型のマスターがこちらに気付いて、顔を上げた。 「おお? また、あおいお姉さまの新人講習の始まりか?」 「うるさいわね」 苦笑しながら、あおいは菜々子を一番端の筐体まで連れて行く。 後で聞いた話だが、この桐島あおいという人物はかなりの実力の持ち主なのだが、『ポーラスター』にやってくるバトルロンド初心者にいつも世話を焼いているのだそうだ。 「バトルのプレイヤーを増やすのも、ベテランの仕事でしょ」 というのが当人の弁。 あまりにも世話を焼くので、常連たちからは「あおいお姉さまの新人講習会」呼ばれ、からかわれていた。 しかし、当のあおいは気にすることもなく、むしろそう言われて喜んでいる節さえあった。 菜々子にしてみれば、これは渡りに船だった。 あおいの行動に少し驚いたが、右も左も分からない自分に、向こうから教えてくれるのなら、こんなに都合のいいことはなかった。 初心者相手のお試しプレイなら手加減もしてもらえるだろうし、ミスティもちょこっとバトルの真似事さえできれば、しばらくは満足してくれるだろう。 おっかなびっくり筐体に座り、ふむふむとバトルのやり方を教わって、いよいよ菜々子とミスティの初めてのバトルが始まった。 この時、菜々子は大事なことを失念していた。 自分がとても負けず嫌いな性格だということを。 ◆ 「しまった……」 今日も菜々子は、『ポーラスター』への道を歩きながら、自己嫌悪に陥っている。 武装神姫によるバーチャルバトルゲーム……バトルロンドに、菜々子はすっかりハマってしまっていた。 実際にプレイしてみると、今まで触れたどんなゲームよりも奥が深くて面白い。 対戦ではそう簡単に勝てないことも、菜々子の負けん気に火を付けた。 今は友人達とも距離を置いているから、放課後にさしたる用事もなく、自らの闘争心の赴くまま、毎日のようにゲームセンターに足を運んでしまうのだった。 もちろん、ミスティは毎日ご機嫌である。 『ポーラスター』に通うのには、もう一つ理由がある。 桐島あおいに会うためだった。 「あら、今日も来たわね、久住ちゃん」 「……はい」 ふふん、と勝ち誇るように笑うあおいに、菜々子は少々むかつきながらも、返す言葉がない。 初めてバトルした日、もう一回、もう一回と何度も対戦を申し込んだのは、むしろ菜々子の方だった。 生来の負けず嫌いがこんなところで顔を出してしまった。 あまりにもムキになった様子がおかしかったのか、 「あらー、ここまで坂道を転げ落ちるようにバトルにハマるのも、ちょっと珍しいわー」 といいながら、あおいは爆笑していた。 それもまた悔しい。 自分から誘っておいて、何という言いぐさか。 いつかこの人に吠え面かかせてやる、と菜々子は密かに誓っていた。 だけど、桐島あおいが嫌いなわけではなく、むしろとても惹かれていた。 端正な顔に、いつも様々な表情を宿し、生き生きとしている。 明るく、社交的で、仲間達からは好かれ、慕われている。 こんな女性になりたいなぁ、と漠然と思う菜々子だった。 そんな憧れの女性は、なぜか、菜々子の面倒をよく見てくれる。 あおいを「お姉さま」などと呼んで慕う女子中高生は一人や二人ではなかった。 しかし、なぜかあおいは、新参者の菜々子が店に来ると、真っ先に声をかけてくれて、菜々子の練習相手を買って出るのだった。 そんな彼女の行動を不思議に思う。 なぜ、自分なのか? まだ出会って間もなく、いまだ悲しみに心捕らわれて、微笑むことすら出来ていない無愛想な女なのに。 それでもあおいは、 「さ、今日もやろっか」 と鮮やかに微笑んで、菜々子の相手をしてくれるのだった。 ◆ それから数日後のある日、『ポーラスター』からの帰り道。 「……何か悩んでる?」 「……え?」 「だって、久住ちゃん。あなた、全然笑わないじゃない?」 「……」 「久住ちゃんの笑顔は、絶対かわいいと思うんだけどなあ」 いつもは門限を気にして、あおいよりも早く帰る菜々子だったが、今日は菜々子に合わせて、あおいが一緒にゲームセンターを出た。 二人並んで歩く帰り道。 ……そういえば、桐島さんってどこに住んでるんだろう? 自分と同じ方向なのかな、などと考えてるときに、あおいから声をかけられたのだった。 二人は近くの公園に足を向けた。 噴水を望むベンチに並んで腰掛ける。 もう夕陽はビルの合間に落ちていき、空はオレンジ色から夕闇へと変わりつつあった。 「なにかあった?」 「……」 「まあ、言いたくなかったら言わなくてもいいけど」 口調はさりげなかったが、瞳の色は限りなく優しかった。 この人は、どうしてわたしのことを、こんなに気にかけてくれるんだろう。 不可解に思いながらも、心の中では少し嬉しく思ってしまっている。 心惹かれる憧れの人が、自分を気にしてくれているのだ。 だが、彼女の前でも、いまだ笑うことが出来ないでいる。 自分の心の内を話せば、彼女は理解してくれるだろうか。 わたしが笑顔を取り戻すきっかけになってくれるだろうか。 期待と不安が心に渦巻く。が、しかし。 「……ええと、その……実は……」 いつの間にかしゃべり出したことに、菜々子自身が驚いた。 意識しないうちに、桐島あおいを信頼してしまっていたのだった。 あおいは、話し始めた菜々子に微笑みかけながらも、真剣な様子で耳を傾けていた。 菜々子の話を聞き終えたあおいは、空に浮かぶ星を見つめ、言った。 「ふーん、そう」 それだけか。 自分のつらい胸の内を吐露したにもかかわらず、気のない一言で片付けられるなんて。 話さなければよかった、と菜々子は一瞬後悔する。 が、次の瞬間、菜々子はあおいに肩を抱き寄せられた。 そして、耳元で聞こえた一言。 「よくがんばったね」 その一言は、菜々子のかたくなな心を、一瞬でほどいてしまった。 菜々子が欲しかったのは、これだった。 同情でも気遣いでもなく、ただ、ただ、わたしが悲しみや不安や辛さに耐えていることを分かって欲しかった。 分かっていると言って欲しかったのだ。 菜々子のほどけた心から、ため込んでいた想いがどっと溢れてきた。 まるで洪水のように、菜々子の心を押し流す。 両親がもういないという実感。もう最愛の家族に会えないという事実。 祖母の気遣い。それは彼女自身の哀しみの裏返し。 友人たちの同情。それは心を許した友への精一杯の優しさ。 本当はみんな分かっていた。 心から菜々子を心配して気遣ってくれているということは。 それに素直に応えられなかったのは……自分に降りかかった不幸をいいわけにした、ただの甘えだった。 「ごめんなさい……」 菜々子の唇から、自然に言葉が転げ落ちてくる。 それは、いままで言いたかった言葉。言わなくてはならなかった言葉。 「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」 菜々子の大きな瞳から、涙がこぼれ落ちていく。 優しくしてくれた人たちに謝りながら、泣いた。 やっと実感した胸を突き上げる悲しさと寂しさに、泣いた。 あおいの肩にすがりつき、菜々子は声を上げて泣きじゃくった。 やっと、心の底から泣くことを許された気がした。 桐島あおいは優しい表情で、号泣する菜々子の肩をそっと抱き続けていてくれた。 ◆ 「どうして……」 「うん?」 「どうして、わたしに声をかけてくれたんですか?」 あおいが声をかけてくれなければ、菜々子の心はまだ闇をさまよっていただろう。 あおいはちょっと上を向いて、うーん、と考えると、また菜々子の方を向き直って、言った。 「女の勘」 「え?」 「ゲーセンで、あなたと目が合った時、ビビッ!ときたのよねぇ……。 この子と仲良くなっておかなくちゃダメって思ったの。仲良くなっておけば、きっと素敵なことが起こるってね」 そう言って、いたずらっぽくウィンク。 相変わらず様になる。 限りない優しさと、太陽のような明るさと。 桐島あおいは、どこか祖母に似ている気がする。 「これからは、菜々子って呼ぶわ。いい?」 「はい、桐島さん」 「あおい」 「え?」 「あなたも下の名前で呼ばなくちゃ、不公平でしょ」 「……はい、あおいお姉さま」 あおいはあからさまに嫌そうな顔をした。 「あなたも、そう呼ぶわけ?」 「それが一番しっくりくるので」 それはささやかな反撃。 だけど、菜々子はこの呼び方がいいと思っていた。 お姉ちゃん、というほど馴れ馴れしくなく、憧れと尊敬を持った距離感のある呼び方。 親愛の情を込めて、その名を呼ぶ。 「お姉さまと呼ばれるのは嫌ですか、あおいお姉さま?」 あおいはその美貌を、心底嫌そうに歪めている。 後で聞いたところ、常連さんが「お姉さまキャラだから」という単純な理由で、あおいをお姉さまと呼び始めたらしい。 それがいつの間にか定着してしまったのだ。本人は自分がお姉さまキャラだなどとは微塵も思っていないから、迷惑この上ない、とのことだった。 それでも、眉をひそめながらも、あおいは頷いた。 「いいわ、もう好きにして」 他の人がそう呼ぶの禁止にしようかな、なんて言って、あおいは笑った。 つられて、菜々子も笑った。 もう真っ暗になった夜空に、二人の笑い声が響く。 両親が亡くなって以来はじめて、菜々子は心からの笑うことができたのだった。 ◆ こうして、桐島あおいは、菜々子にとって、特別な人になった。 憧れの女性であり、武装神姫の師匠であり、目標であり、ライバルであり、もっとも心許せる友人であり、一番の理解者で……本当の姉のように思っている。 今も。 次へ> Topに戻る>
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【武装神姫】セッション2-1【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18416769